【ユリア聖誕祭 〜きよしこのよる〜】
「てーねーぜー、くろーりょー、てーぜー」
にこにこと上機嫌に笑いながら執務室に紙で作った花を飾り付けていく部下の姿を、
ジェイドはしばらくの間 黙って視界の端に見ていたが、
手元の仕事が一区切りついたところでゆっくりと顔を上げた。
「なんです? それは」
「花飾りです!」
「それは見れば……ああ、なんだかいつかもこんなやり取りをしましたね。
違いますよ。 今の歌……歌ですか? 歌ですよねぇ。 それはなんなんですか」
まあ行動にも若干の突っ込みどころはあったが、
これでもビビリさえしなければ基本的にまじめな男だ。
ちゃんと自分の仕事を終わらせた上で、休憩時間にやってることなのでそれに関しては己が干渉することではない。
しかし先ほどの、どこかで聞き覚えがある旋律が気にかかった。
旋律は、確かにそうだ。 いやしかし、そんなまさか。
あんな情緒もなにもない童謡のような歌われ方のものが。
「あれですか?」とがまた嬉しげに笑みを浮かべる。
「ティアさんの譜歌です!!」
「譜歌ですか」
本当にあれが、という驚きと同時に、それはティアの譜歌ではなくユリアの譜歌なのだが、と考えるも、
彼にとってあれは“ティアの”譜歌に他ならないのだろうと思い口にはしなかった。
「てーねーぜーくろー、りょー、てーぜー」
また調子はずれに歌を口ずさむ子供の、揺れる背中を眺めながら、
ジェイドはひとつ笑みを浮かべて、また書類へと視線を落とす。
オールドラントのクリスマス。
>「なんだかいつかもこんなやりとりをしましたね」
崩落編Act41にておんなじような会話を繰り広げた上司と部下。
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